2024年の10月にイギリス政府は大幅な増税策を発表しました。
施行されるのは2025年4月から。
日本も相当ですが、イギリスも生活の苦しさでは負けていません(なんの張り合いだ)。
- イギリスでは税金がどのように使われるか興味のある方
- イギリスが抱えている課題に興味のある方
2025年から始まる大幅増税
2024年10月31日、イギリス財務相は予算案を発表しましたが、その中には400億ポンドの増税案が含まれていました。
単年度の税額ではなく、来年度以降、継続的に税収を増加させる方向性のようです。
2024年11月15日現在のレート(1ポンド約198円)で日本円に換算すると、400億ポンドはだいたい79兆円です。
金額が大きすぎてあまり実感が湧きませんよね。
なんでいきなり政策が転換されたの?
政権交代が大きな要因の1つかな。
2024年7月保守党に代わり労働党が総選挙で勝利したため、政策変更に舵を切ったわけです。
増税の主な目的
公共サービスの立て直しに税金が使われるようです。
特にNHS(National Health Service)関連の予算に250億ポンドの投入が決定されました。
イギリスでは基本的に無料か低価格で医療サービスを受けることができます。
無料はすごいな!
問題なくサービスを受けることができるなら確かにすごいね。
ただ、保守党政権下で公的サービスへの税金投入が控えられる中、医療待機者はかなりの数に及びました。
2023年では、病院の予約をとってから医療を受けるまでに1か月以上待たされた人が1760万人1に昇ったとのこと。
サービス提供側の給与待遇もあまりに悪く、近年大規模なストライキも相次いでいました。
そりゃあ、素人目に見ても税金の投入は必要だね。
増税の対象者
主なターゲットは企業や富裕層になりました。
雇用主が負担する国民保険料、キャピタルゲイン税、非居住者への課税などの負担が増加します。
ですが、企業への負担が増えるということは、実質的に労働者にしわ寄せが行くと考えられ、従業員のリストラや給与削減が進むことも危惧されています。
富裕層の国外脱出もささやかれており、今回の増税施策が奏功するかは未知数な状態。
どうして大幅増税が必要な状況に追い込まれてしまったのか
長く続いた緊縮政策
2010年に保守党が政権をとってから、財政赤字削減が進められてきました。
リーマンショックに端を発した金融危機や経済政策への批判を受けた政権交代です。
当時のポンド安はすさまじく、GBP/JPYは250円近辺で推移していたレートが2008年末には130円台まで下落しました。
まさに落ちるナイフだった。
保守党による政策で、財政赤字はコロナショックまで減少傾向にありました。
その代償として、医療・教育・福祉・地方自治体のサービス・インフラ等に様々な弊害が発生したのです。
高齢人口の増加
日本と同じく、イギリスでも人口に占める高齢者の割合が増えています。
1960年は約12%でしたが、2023年時点では約19%に2。
高齢者の増加により、医療従事者のニーズは高まっているのですが、現状全く人が足りていない状態。
前述したNHSの待遇が悪いことや、EU離脱によりヨーロッパ圏出身の医療従事者が祖国へ帰ってしまったことも原因として挙げられます。
特定業種の深刻な人手不足
ブレグジットによりEU加盟国からの人の流入が制限され、特に農業、建設、介護などの分野で労働力不足が顕著になりました。
コロナショック時は建設プロジェクトの一時中断や、材料費高騰も労働人口に影響を与えました。
労働党が政権をとってからこれらの業種について、移民政策の見直しが考えられているようです。
建設や介護の人手不足は日本も共通してるよね。
インフラの老朽化
一口にインフラと言っても、ありとあらゆるインフラの老朽化が問題視されています。
水道インフラの老朽化
南東部に水道を供給するテムズウォーター社は、老朽化した設備のメンテナンスや環境規制への対応などで巨額の投資が必要となり、経営状態が悪化しています。
同社は2022年以降、2025年3月までに15億ポンドの追加出資を求めていましたが、資金調達が難航し、経営トップの辞任も相次ぎました。
2025年11月現在も債務返済期間の延長や資金調達に苦しんでいるようです。
結果として水道インフラの改善が進んでいない状況に。
交通インフラの老朽化
鉄道や道路などの交通インフラも老朽化が進んでおり、特に地方部でのメンテナンス不足が指摘されています。
これにより、事故のリスク増加や輸送効率の低下が懸念されています。
エネルギーインフラの老朽化
発電所や送電網の老朽化も問題化し、既存インフラのメンテナンスが急務とされています。
全てに手を回すのはおそらく無理だろうし、不要なものはメンテナンスを諦めるしかないのかな。
インフラ課題も日本に近いものがあるね。
おわりに
イギリスの社会課題は日本と似ていますね。
医療介護・建設業界の人手不足が顕著で、海外からの労働力に頼らなくてはならない。
高齢化が進み、人口減少に歯止めがかからない点など。
どちらの国も「やっぱり移民を増やそう」という方向性をとっていますが、本当にそれが正しいのかは疑問です(日本は移民政策をとっていない体ですが、技能実習生制度など事実上の移民政策として述べています)。
一時的にでも人口減少を受け入れて、今の10・20代が数年後に幸せな家庭を築きたくなるような施策に注力した方がいいのでは?と個人的には考えてしまったり。
海外に住んでいて思うのですが、現地の生活様式(特に仕事)に国外の人が適応するのは難しい場合が多いのでは・・・。
移住先の国へ多少文句を言ったり不満を表したりするのは仕方ないことでしょう。
しかし、自国出身者のコミュニティを作り日常的にルール違反が横行する地域ができたり、仕事に耐えられなくなって生活費のために犯罪に走る外国籍の人が増加、なんてことはその国が目指していた方向性と違うことが起きているのではないでしょうか。
イギリス・日本とも今の若い世代の人たちが幸せに暮らせる社会ができればいいな、と勝手に思っています。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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