最近、日本のニュースを見ていると、石破政権が就職氷河期世代に向けた支援を打ち出しているとの記事が目に留まりました。
私は就職氷河期が終わりに近づいている時期に大学3・4年生でした。
在籍していた大学はレベルの高いところではなく、50~100社エントリーするのは当たり前といった風潮。
周りを見ても大変そうにしている学生が多数見られました。
この記事では就職氷河期の発生から、これまで実施された支援策等につい振り返っていきたいと思います。
- 就職氷河期世代の方
- 就職氷河期について知りたい方
- 就職氷河期世代の支援施策への考えを知りたい方
就職氷河期とは?

1993~2005年頃の採用数が少なかった時期
この時期は後述する不況により、企業が正社員採用数を絞っていた時期でした。
当時はそこまで少子化は進んでおらず、専門学校や大学の卒業生が多かったのに対し、企業の門戸はかなり閉じられている状態。
日本は2025年4月現在、不況と言える状況ではないかもしれませんが、現在の中国はこの状況に近いかもしれません。
長引く不況の影響が大きかった
1990年代初頭にバブルが崩壊し、不況に突入してから状況が好転するまで15年ほどかかりました。
採用が回復したとされる年は、人によって若干判断が異なるかもしれません。

とは言え2008年にはリーマンショックが起きるわけだし、つかの間の回復と言えるのかも。

確かに。
当時、努力して希望の就職先に入った人たちも、長いこと苦難の時期を過ごすことに・・・。
就職氷河期はなぜ発生したのか?
1985年のプラザ合意
ことの発端は1985年まで遡ります。
当時のアメリカは巨額の貿易赤字を抱えていました。
そこでイギリス・ドイツ・フランス・日本等に対し、ドル安を誘導するように要請。
世に言うプラザ合意ですね。
当時のドル円は200円台半ばから1年で150円ほどまで円高が進みました。
円高が進んで輸出競争力の低下や不況が危惧されるようになりました。
1986年からの金融緩和とバブル形成スタート
円高による不況を防ぐために、当時の日銀は政策金利を大幅に引き下げました。
この結果、日本中でお金が余る事態に。
余ったお金で金融機関は融資を拡大し、株や不動産へ資金が流入。
日経平均や土地価格は青天井の様相で上昇していきました。
バブル崩壊(1991~1993年)

株式市場や不動産価格の動きに懸念を示していた日銀はバブルを警戒し始めます。
公定歩合(日銀が各銀行にお金を貸し出す際の金利)を2.5%から6%へ上げることで、じゃぶじゃぶに出回っていたお金の引き締めを開始。
この結果、企業・個人ともに借り入れコストが急上昇し、バブルが崩壊してしまいました。

当時はバブル崩壊という先例が世界を見てもあまり例がなく、ソフトランディングさせるのは難しかったのだろうね。

今はアメリカが当時の日本の何倍ものバブルだから末恐ろしいわ・・・。
こうして長引く不況が幕を開けたのです。
アジア通貨危機(1997~1998年)

日本のバブルが崩壊した1990年代前半、アジアでは韓国・タイ・マレーシア・インドネシアなどの国が急速な経済成長を遂げていました。
しかしこれらの国々にはいくつかの問題点がありました。
- 為替レートにドルペッグ制(ドルに対してレートを固定)やバスケット・ペッグ制を採用して安定をアピール
- 各国の銀行や企業がドル建てで大量の借金をしていた(大量の外貨債務があった)
- 欧米からの大量の資金流入で株・不動産バブルに発展していった
- 監督体制が整っておらず過剰な融資が横行、不良債権が積みあがっていた
そして1997年の7月、タイで不動産バブルが弾けました。
企業倒産件数が急増し、タイから資金を引き揚げる動きが顕著になります。
ここでタイバーツ売りが大量に発生、タイはペッグ制を維持するためにドル売りバーツ買い介入を実施。
しかし外貨準備金が底をついてしまい、バーツの切り下げを余儀なくされました。
通貨暴落は通貨安で輸出が強くなるといったプラスのイメージもあるかもしれません。
しかし前述の通り、当時のタイには大量の外貨債務がありました。
通貨価値が暴落→外貨債務が返済不能に→企業破綻の増加→融資を回収できない銀行の破綻増加という最悪な循環が起きてしまったわけです。
「タイで起きたことがペッグ制を採用していて外貨債務の多い他のアジア諸国でも起きるのでは?」
こうして同じ流れが当時ペッグ制(アメリカドルがメイン)を採用していたアジア各国へ波及、経済は火の海になりました。
そしてこれらのアジア諸国には欧米のみならず日本の金融機関も巨額の投資を行っていました。
バブル崩壊で経営体力が弱っていたところに致命的な一撃が加わり、結果として複数の銀行や証券会社が倒産しました。
北海道拓殖銀行や山一證券の倒産が例として挙げられます。
北海道拓殖銀行の破産は当時テレビで大きく取り上げられ、北海道の関連企業も次々と倒産していきました。
バブル崩壊後の不況がさらに深刻になってしまったわけです。
経済環境の悪化が及ぼした就職への影響
各企業が採用人数を極端に絞り始める
1990年代~2000年代半ば日本経済の状況は、上記の通りボロボロでした。
こんな状況ですので企業はリストラにこそ積極的であれど、採用人数はかなり絞っていました。
銀行も不良債権処理に追われていたため、貸し渋りや返済期限前の融資を積極的に回収しようとする動きも見られました。

そりゃこんな状況じゃ新卒採用どころじゃないよね。
非正規社員の増加
1985年に旧労働者派遣事業法が制定されたとき、派遣できる業種は13業種のみでした。
1996年には企業が雇用調整をしやすくする目的で13業種を26業種に拡大。
さらに1999年には一部の限られた業種(建設・製造・港湾・警備など)以外は全面的に派遣が解禁されました。

2003年には製造業への派遣も解禁されて派遣社員の人数が急増したみたいだね。

これが格差社会の始まりだったのかも。
今まで政府がとってきた主な氷河期世代支援

就職氷河期世代支援プログラムが策定される
2019年、当時の安倍政権は3年間で氷河期世代30万人の正規雇用化を目標に掲げました。
就職氷河期世代支援プログラムと言われています。
この中では下記のような支援策が盛り込まれました。
職業訓練やスキルアップの支援
ハローワークを経由し、国から委託された民間の職業訓練校や専門学校などで求職者が講座受講できる支援制度です。
短期間のコースが多く、条件付きですが職業訓練受講給付金の対象となり、最大10万円と交通費を受け取ることもできました。
ハローワークには就職氷河期世代の就職に関する専門窓口もできていました。
非正規から正規雇用への移行推進
ハローワーク経由の求人にある「トライアル雇用」の年齢要件が、氷河期世代に対応したものに拡充されました。
氷河期世代を採用した企業には助成金が支給されました。
氷河期世代に限定した公務員採用枠の設置
国家公務員や地方公務員の採用に氷河期世代限定の枠が創設されました。
通常の採用枠と異なり、年齢制限が緩和されています。
就職氷河期世代支援プログラムの課題
氷河期世代の中でも特に弱い立場限定
就職氷河期といっても、その中でも安定した仕事に就くことができない人向けの支援。
個人的には「30万人就業」という数値目標を少なく感じましたが、やはり働いていない方を働かせるということが第一目的のようです。

税収増加のために無理やり働かせるんだ!感があるな・・・。

氷河期世代で無職の人口は少なくないらしく、このまま高齢化が進むのはまずいという判断もあるとか・・・。
未経験者なら採用側が欲しいのは若手
当たり前ですが、採用担当者が自分より年上で業務経験の浅い氷河期世代を欲しがるかといえば、答えはNOでしょう。
氷河期世代の応募者も自分より若く、仕事ができる人に囲まれながら働くのは苦しいでしょう。
限られた業種によっては氷河期世代が若手になる可能性もなくはないと思いますが、大多数の企業では採用のミスマッチが多発しても致し方ないと思われます。
2019年の支援策では、そもそも希望職種の募集自体ほぼないといったケースも多かったようです。
氷河期世代の長期未就業者はすでに就業をあきらめていることも
長い間働いていないのに、40代前後に達した人間が今から新しい職場で頑張ろうと思えるかといえば、なかなか難しいのではないでしょうか?
中には積極的に働かないという選択肢を選んだ人もいるでしょう。

「支援と銘打っているけど金づる増やしたいだけでしょ?」という見方をして制度そのものを嫌悪している人数も一定数いそう。

実際その側面はあるだろうけどね。
石破政権の氷河期世代支援の中身は?
まだ検討段階とのことですが、今回の支援は主に下記3つのようです。
就労・処遇改善に向けた支援
就労はあまり真新しいものが出ないのでは?と想像しています。
処遇改善については、氷河期世代の給料が新卒の給与と同程度や低い場合、フォローする施策でも出るのでしょうか?

10個以上下の新卒の給料が自分と同じかそれ以上だったら、指導側はやってられないよね。

初任給上昇に合わせて給与改定で既存社員の待遇上げるのが普通なんじゃない?
元からいる社員のモチベーション低下も見抜けない人事しかいないとしたら、その会社は潰れそう。

それと石破さんは賃金を上げるためにリスキリングを~とか言ってるみたいだね。
これから他の仕事に挑戦するような人に対してならいいと思うけど、今の会社の中だったらリスキリングで賃金を上げるのは難しくない?

一度会社に入った後、賃金を上げるためにすることって結果を残すことが大半だしね。
特定の資格やスキルが要因で少しは賃金アップになるかもしれないけど、リスキリングは大して影響しないでしょ。
社会参加に向けた段階的支援
どの程度段階を踏むのかは分かりませんが、短時間労働やトライアル制度のすそ野を広げる施策でしょうか。
ふわっとしすぎていてどういった支援になるのか現段階だとよく分かりません。
高齢期を見据えた支援
貯蓄方法や健康管理についての指導でしょうか。
年金だけで生活していくのが難しい昨今、資産形成についての指導も行われそうですね。
何故再び就職氷河期支援が行われようとしているのか
選挙対策のアピール
今や選挙へ行く世代の内訳として就職氷河期世代は少なくありません。
今後はこの層にどのようにリーチしていくかで、選挙の勝敗が変わってくるケースも出るでしょう。
とはいえ、当事者にどの程度響いているのかは謎ですが・・・。
税収減・生活保護費増などの社会保障費負担増への対策
就職氷河期世代の未就業者の人数は決して少なくありません。
この層がこのまま高齢者になり生活保護を申請し出すと、社会保障費の負担が一気に増加してしまうリスクを孕んでいます。
できるうちに対策をしておくことは必須という焦りからきているものかもしれません。

リセッション入り間近にしても遅いかもしれないけど・・・。
支援策を通じた利権創設・予算確保
この支援策にぶら下がって予算が欲しいという邪な考えを持っている関係者もいるかもしれません。
人材業界団体と結びついてキックバック狙いなんてことも可能性は0ではなさそうに感じます。

特に自民党がやるとね!

裏金について「追加納税の必要性有無は議員個人の判断」て受け取れる発言するような人がいるしなぁ・・・。
人手不足の業界へ氷河期世代投入
私は石破首相を甘く見ていたようです。
よく記事を探したら、LOGI-BIZonlineというサイトに「「就職氷河期世代」支援で建設・物流業への就労拡大など検討指示」という記事が。

・・・石破首相は氷河期世代の年齢にすら興味がないのかな?・・・

これらの業種にも内勤はあるだろうけど、実務知らないと厳しいしだろうし、募集自体あまりなさそう・・・。
選挙前のポーズだと思っていたら、ポーズすらとれてない笑。

こんな人間が今の日本の首相なのか・・・。
・・・血も涙もありませんね泣。
支援がないよりは良いかもしれませんが、かけたお金ぶんの経済効果が出るかは未知数・・・。
おわりに
支援するなら本人のやる気のあるうち(若いうち)に行うべきだったというのが個人的な感想です。
自分を棚に上げて書きますが、氷河期世代の中では働いていなくても親の介護に時間を割かれたり、大変な思いをしている方もたくさんいるのではないでしょうか?
そういった方に就労支援を掲げたところで響かないケースは少なくないだろうと。
制度としてないよりはあった方がいいとは思いますが。
氷河期世代を尊重しつつ支援するというのなら、税制優遇や介護負担の軽減といった形の方が適しているように思えます。
おそらく税収増・社会保障費減が第一目的でしょうし、そんなことは現与党にはできないと思いますが・・・。
今のところ石破さんの掲げている3本の柱は「関連業種と一部の関係者は儲かりそうだけど、それ以外の人へは恩恵が小さそう」だと感じました。
政治に期待しすぎない方がいいですね。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
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