マレーシアBPOにおけるコンテンツモデレーターの労働環境

私は日本でもBPO業務に携わってきました。

BPOとは「Business Process Outsourcing」の頭文字をとった言葉で、文字通り業務プロセスの一部を外部委託することを指します。

「BPOの会社」と言うと、様々なクライアントから委託された仕事を基幹業務とする会社を意味するのが一般的。

マレーシアと日本では、BPOにおける労働環境が様々な点で異なります。

「マレーシアのBPO」というと主語が大きすぎる気はするのですが、私がコンテンツモデレーターとして経験した一例を記載していければと思います。

この仕事に就業するまでの流れも記事として投稿しました。

よろしければ合わせてご覧ください。

コンテンツモデレーターについて

私は現在、コンテンツモデレーターという仕事をしています。

これはクライアントが運営する某動画サイトにおけるユーザーの投稿を視聴し、違反がないかチェックする業務です。

会社内のヒエラルキーでいうと一番下のレイヤーで、日本のBPOでいうと派遣社員さんや契約社員の方が担うポジション。

同じクライアントでも、モデレートする内容によって複数のチームに分けられています。

「どこのチームでもクライアントが同じならやることそんなに変わらないんじゃない?」

・・・と最初は思っていたのですが、全く違いました。

時間を持て余すチームもあれば、小休憩もとれないほど忙しいチームも。

ですが給料は変わらず・・・かなり理不尽に感じる人もいるかと思います。

実際、日本人の方でこんな環境じゃやってらんねぇよ!」とキレて辞めた人もいました。

チーム配属はガチャ要素強めです。

労働時間

1日9時間拘束の8時間労働で、チームによっては夜勤があります。

私の場合、月曜以外は1~2時間程度で作業が終わってしまう日が半年ほど続きました。

午前中から「今日残り時間どうしよう・・・」と途方に暮れる日々。

基本的にネットも見れず座席にいないといけないので時間との闘いに・・・。

半年たった頃、新しい業務が追加され、急に忙しくなりました。

BPOは業態の関係上、自社で仕事量を調整しづらいというデメリットがあります。

ただ自分は暇を持て余すより忙しい方が好きなので、ようやく「自分は海外で働いている」という実感をもつようになりました。

給与

入社時の給与は出身国と前職の給与が反映されます。

出身国ごとにレンジがあり、その範囲から前職の給与を参考に支給額が決定されるというイメージであっていると思います。

今は他社で日本人ならRM10,000越えの求人があるという話を聞きます。

私の給与は月RM9,000。KPIを合わせるともう少しだけ増加。

自分は今の仕事内容ならば、このくらいもらえれば十分と感じています。

出身国によって給与レンジに2倍近く開きがあるので、職場でお金の話はしない方がいいと勝手に思ってます(・・・日本人特有の感覚かもしれませんが)。

締め日と支給日も日本と異なります。

例えば9月分の給与でしたら、9月1日~9月30日までの給与が末日である9月30日に振り込まれます。

要注意なのがマレーシアに滞在してから182日経過するまでは外国人税で30%天引きされるという点。

例えば8月半ばに入社した場合、翌年2月末支給分までは給料から30%外国人税が徴収され続けます。

E-filing(マレーシアの確定申告)申請後に大部分返還されるようですが、日本と同じく返還処理に少々時間がかかるようです。

休日

同じチーム内でも、どの国の動画を担当するかで休みが異なります。

基本は週休2日制。

公休日以外にも、マレーシアの祝日日数分、自分の好きな日に休みを申請できるタイプの休日(Additional Work OFF)と、有給休暇(Annual Leave)が別にあります。

ただ、私のチームは日本人モデレーターが少ないので、週に2人で1日しか上記の休みを申請できません。

また、AWOについては土日と合わせて月11日までに収めないといけない、という縛りも。

一時帰国などの理由によっては長期休暇は取得可能。

病気で当日欠勤した場合はSick Leaveの申請をすれば、給与から休んだ分お金が引かれることもありません。

ただ、病欠が多い場合、AWOとALが取り消しになる可能性ありという警告もありました。

さらに、Sick Leaveはチームリーダーの裁量で受け付けないことができるので、休みの承認有無は総合的に普段の勤怠状況が反映されます。

「休暇申請に係る煩わしさ」という点では日本の会社の方が少ないように感じます。

チームメイトの特徴

自分のチームにはマレーシアの他に、インド・インドネシア・タイ・ベトナム・フィリピン・日本国籍のメンバーがいます。

社内の公用語は英語ですが(私はほぼ喋れず泣)、同じ国の人同士は母国語でコミュニケーションをとっている印象です。

個人的には労働時間と給料には別段不満がなかったのですが、この国籍による文化の違いにもかなり頭を悩まされました。

話し声がうるさい

ヘッドフォンをつけてモデレートをしているのですが、インドネシアチームから私語が絶え間なく聞こえてきます。

声が大きいので、動画の音声に耳をすませようとしても、集中力を削がれやすい環境

仕事内容を見て自分はモクモク系で没入感がある仕事が好きだから、コンテンツモデレーターをマレーシアでやってみたい!」という方は、おそらくイメージと違う職場環境にギャップを感じるのでは、と思います。

ネガティブな話から入ってしまいましたが、彼らのよいところはたくさんあります。

個人的な印象ですが、明るく、人のミスに寛容で、団結力がある点などが挙げられます。

彼らは仕事がはけてしまうと離席して好きな位置に移動し、色々な人と会話を楽しんでいるようです。

みんなコミュ力高く、国民性なのか、朝・昼・夕食一緒という人達も。

自分からしたらよくそんなに話すことあるな・・・と感心するばかりです。

コンプラ意識が薄い

前のチームリーダー(異動してしまった)ですが、人の給与を口頭でばらしたり、うるさいグループに注意するのではなく、自ら話に加わるという行動をとっていました。

「普段からそんな行動をして、この人の指示をチームメンバーが素直に聞くと思っているのだろうか・・・」と半ばあきれながら眺めていました。

毎月理解度確認テストがあるのですが、チャットで回ってくる回答を写してお終い、といったメンバーが大半だったりもしました。

リーダーも黙認(チームの成績が自分の成績に直結するため)。

テストを運営してるチームから「カンニングするな」とお達しはあるのですが、みんな守っていませんでした。

かくいう私も最初の2か月くらいは周りに流されていたのですが「このままでは民度が低すぎる」と感じ、回答を見ずに時間をかけて解くことにしました。

コミュ強が多い

みんな基本的に親切ですし、賑やかな雰囲気が好きな人は楽しめると思います。

基本1人で仕事に没頭したいというメンバーもいなくはないですが、時間があれば他の人と話したいといったメンバーが大半です。

私はコミュ力がなく、日々淡々と静かに・親しい人とだけ関わりたいみたいなところがあるので距離感の近い付き合いを継続するのは難しいなと思いました。

メンバーの平均年齢も20代後半でだいぶ若いと思います。

個人的な感想ですが、チームメンバーは日本ほど年齢を気にせず接してきてくれると感じてます。

会社の特徴

一部は会社のというよりプロジェクトの特徴になります。

重すぎるネットワーク回線

会社の有線ネットワークに問題があり、頻繁に動画がスタックします。

最近は改善されてきましたが、入社数か月は低い通信速度が一番のストレッサーでした。

1件のタスクをこなさないといけない時間が定められているのですが、動画は固まりまくる。

報告を挙げたところでしばらく改善もなく初期のADSLかな?といったレベルでした。

昨年末頃から大分改善しましたが、プロジェクトが拡大し続けているせいか、再び重くなってきています。

日本なら仕事で使うインターネット回線としては間違いなく「品質に難あり」というレベルです。

ロッカーを複数人で1つ使用

個人的に「さすがにそれはないでしょ」と思いましたし、導入時は多くのメンバーからクレームが出ました。

シンプルに人数分のロッカーが足りず、増やす気もないみたいです。

ここから会社がコロナ対策について社員の健康を軽視している・レピュテーションリスクを考えてないという印象を持ちました。

実際、他プロジェクトで働くベトナム人の社員さんがYoutubeで愚痴ってるのを見て「あぁー、このプロジェクトだけじゃなくて会社ぐるみかぁ・・・」とちょこっと悲しくなりました。

モノを入れるキャパがほぼないので、入らない荷物を他のスペースに置く人も出ます。

ですが、置こうものなら「どかせ」とチャットグループに連絡がきます。

社内で盗難多発

業務スペース以外で携帯を充電していたところ盗まれた・パントリーにおいていた自分のタンブラーが盗まれた・仕事用のヘッドセットをそのまま席に置いておいたら翌日盗まれていた等、枚挙に暇がありません。

別記事で書こうと思っているのですが、私は入国初日にショッピングモールで財布を盗まれました泣。

「会社内なら盗難の心配はないだろう」と思っているとそんなことはありませんでした。

社内イベントが多い

表彰式や旧正月・バレンタイン・クリスマスなどシーズンに合わせたイベントが毎月何かしらあります。

若者が多いので、結構盛り上がりますね。

成績が良かったメンバーに表彰状や粗品が贈られます。

イベント終了後はパントリーで食べ物が振舞われるケースが定番の流れ。

「インスタ命」みたいな人も多いので、イベント多めにして意図的に映えるシーンを社員に提供しようとしているのかもしれません。

日本以上にクライアントの意向第一

上記で挙げた社内イベントも、急遽クライアントが来社するとなった場合、日程を来社に合わせて調整します。

社員の入社スケジュールについても、クライアントの意向が大きいという話を聞きました。

私の場合も入社日までのスケジュールがガチガチに決められていたのですが、転職エージェントから聞いた話だとクライアントから依頼があったらしいとのこと。

正直、そこまで待遇の良い仕事ではない(悪くもない)こともあり、一度入社を断る旨伝えたところ会社が調整してくれることになり、今に至ります。

現在のチームを見ても明らかに仕事量に対して人数配分が多すぎるマーケットがあるため「もう少し人数を減らせば粗利が増えるのでは」と勝手に思っています。

おそらくクライアントの指示により、各マーケットの人員数も管理されているということなのでしょう。

どんな人がマレーシアBPOのコンテンツモデレーターに向いているか

向き不向きについて私見を述べます。

参考に私の日本/マレーシアの労働条件を比較した表も記載しました。

向いている人

・1度は海外で暮らしてみたい方

・英語を業務で使いたい方

周りがだらしなくても許容できる方(重要!)

・コミュ力の高い若者

・楽して日本の派遣・契約社員並みの給料を稼ぎたい方(決して楽しい・充実しているという意味ではありません)

向いてない人

キャリア志向でビジネス戦闘力を高めたいと思ってる方

周りから真面目と言われる方

周囲に対する期待値の高い方

日本レベルの民度を職場に求めている方(マイナス方向へのギャップに苦しむ可能性あり)

そもそも国を問わずキャリア志向の方はBPOを目指さないと思うのですが、あまりご存知ない方のために記載しました。

また感覚値ですが、言語を横に置いておくと、マレーシアBPOの中では日本人は平均して地頭が良いように感じます。

それ故に仕事ができる人にとっては、周囲に対して「なんでこんなことすらまともにできないんだ」とストレスが溜まってしまうこともあるかもしれません。

チームリーダークラスまで行けば転職にやや有利かもしれませんが、平のエージェントは単純作業なので、キャリアに活かすことは難しいと思われます。

日本との労働条件比較

私が日本のBPOで働いていた時の条件と比較してみました。

日本マレーシア
給与(額面)280,000円RM9,000
*1(約288,000円)
手取り約230,000円
(交通費抜き)
*2 約RM8,600
(約275,000円)
昇給毎年の査定による2年ごと
残業月10~20時間ほどほぼなし
健康保険ありあり
年金あり*3 あり(希望者のみ加入)
コンプライアンス意識
ネットワークインフラ
言語日本語のみ日本語/英語

*1 1RM=32円の為替レートで計算しています。

*2 マレーシア入国から182日経過後の手取り額になります。

*3 EPF(Employees Provident Fund)と呼ばれる積み立て年金制度があります。

手取りの差がすごいことに・・・。

私は契約社員だったので、日本にいた頃からボーナスはありませんでした。

現在働いているプロジェクトは、ボーナスがない代わりにインセンティブはあります。

今回の表では除外しました。

マレーシアBPOで他社の話ですが、ボーナス支給している会社もあるようです。

日本の年金はせめて払った分を老後にらえるという安心感があれば天引き額も納得できるのですが、個人的にはもらえるかどうか怪しいと感じています。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

会社の雰囲気や労働条件が少しでもお伝えできましたら幸いです。

日本にはあまりない環境なので、日本の会社で自分の居場所がないと感じている方にひょっとするとフィットするかもしれません。

英語も日常会話ができれば問題ないかと思います。

逆に「厳しい・きつい環境でシバかれたい!」という人には向いてない可能性があります。

今後も時間を見て気づいたことを追記していく予定です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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